子宮頚癌予防とワクチンについて

昨年末に子宮頚癌ワクチンの認可がおりました。初めて癌が予防できるワクチンとしてマスコミで取り上げられ、話題となっています。

当院にも子宮頚癌ワクチンについてのご質問が毎日のように寄せられます。多くの方にワクチンを受けていただき、少しでも子宮頚癌を減らしたいと言うのは、全ての人が願うところです。

しかし、Dr.TAKA流に辛口に考えると、このワクチンにはいくつかの問題点があります。時間が経過するにつれ解決すると思われますが、その事を納得して使わないと、後で失望する事になるかもしれません。マスコミでは利点ばかりが強調されますが、欠点もあると言う事を忘れてはいけません。

 

Dr.TAKAの考えるワクチンの問題点

このワクチンが臨床的に使用されてから、まだ、7年くらいしかたっていません。しかも、そのほとんどが12歳前後の女児に使用されたものですから、本当にこのワクチンを打つ事によって子宮頚癌による死亡率が減るのかどうかは、あと数年から十年くらいしないと判断できない事なのです。つまり、まだ、本格的な臨床結果が出ていないワクチンであると言う事を忘れてはいけません。

原因となるウィルスについて

問題になるHPVというのは非常に種類の多いウィルスです。つまり、ウィルスが突然変異を起こす可能性が大きいという事です。このワクチンが予防できるHPV16型および18型が淘汰された時、これらのウィルスが変異したり他の子宮頚癌に関与するウィルスが増えたりする可能性がゼロとは言い切れません。最悪の場合を考えると、ワクチンを行う人が増えた事によって、別のタイプのウィルスが増えて、結局予防効果がなくなると言う事さえ考えられるのです。

HPVの16型および18型と言う子宮頚癌に関連するウィルスは、日本において全体の子宮頚癌の60%、20代~30代の子宮頚癌の80%に関与していると言われています。しかし、逆に言うと20~40%は予防できないという事です。例えば、この車に乗ると事故にあう確率が20~40%ありますとか、この飛行機に乗ると20~40%事故にあう確率がありますとか言われて、貴女は乗る気になるでしょうか?医学的に言うと素晴らしい確率の予防率なのですが、日常生活で考えれば予防できない可能性はかなり高いのです。

ワクチンの効果について

ワクチンの効果は20年程度とされています。しかし、これは机上の理論です。人間の体には多くの要因が働きますから、実際に20年たってみないと本当にワクチンの効果が20年続くかどうかはわかりません。先に書きました通り、臨床で使われ始めてから7年程度しかたっていないのですから、20年効果があると言う事が実証されるのは、13年後となります。

ただし、このワクチンは他のワクチンと違ってウィルスの遺伝子情報をもたない特殊な物質からできています。そのため、副作用が起こる率が非常に少ないと言われています。そういった面から考えると、とりあえず打っておいても損はないワクチンだと思われます。
しかし、値段が高いという問題点(3回接種が必要で、約5~6万円)があり、値段相応の価値があるかどうかは個人の価値観によると思います。

定期検診を受けましょう!

このワクチンは先に書きましたように、子宮頚癌の原因となるウィルスの60~80%を予防すると言われています(最大に効果を発揮した場合)。つまり20~40%は予防できないのですから、ワクチンを受けたとしても子宮頚癌検診を定期的に受けなければいけない事には変わりありません。子宮頚癌ワクチンを受けたからと言って安心して、子宮頚癌検診を受けない方が増えれば、子宮頚癌による死亡率が高くなるという危険性があります。

ワクチンの利点

このワクチンの一番の利点は、子宮頚癌の中でもまれですが悪性度が強い子宮頚部腺癌の予防と言う事にあると思います。子宮頚部腺癌は発症すると1年以内に進行するため、1年に一回の検診では早期発見が難しいと言われている特殊な癌です。しかも、初期症状が少なく、下り物がいつもより多くなると言った程度なのでご自分でも気がつきません。つまり、発見された時には進行していて手がつけられないという事が多い癌なのです。この癌にもHPVが関与していると言われており、現在行われている子宮癌検査ではカバーできないこの癌が予防できるという事は、60~80%子宮頚部腺癌の患者さんを救える事になると思われます。ただし、この癌は子宮頚癌の中でも数%でしかないので、誰もがその効果を享受できるわけではありません。

まとめとして…

Dr.TAKAとしては、上記の事をよくご理解いただいて子宮頚癌ワクチンを受けられる事をお勧めします。決して、マスコミで吹聴されているように、子宮頚癌が全て撲滅できる夢のワクチンと言う事ではありません。しかし、これらの欠点を理解する事によって、子宮頚癌を減らす有効な手段の一つとなると思われます。

また、副作用は少ないのですが、いかんせん値段が高すぎて使用を躊躇する方も少なくありません。是非、メーカーには企業努力によって値段をできる限り下げると言う事を期待しています。公的補助金の問題があるとはいえ、それらはほとんどが小・中学生を対象としたもので、成人に対するものではありません。より多くの方が子宮頚癌ワクチンを受けるためには、値段を下げると言う1点にかかっているのだと思います。

レディースクリニック市ヶ尾 院長 高橋 誠治(たかはし せいじ)

2013年6月現在、子宮頚癌ワクチンの合併症が取りざたされています。しかし、この副作用は、予防接種の副作用としては非常に低い確率で起こっています。予防接種は副作用が起こる事もあるという事を考慮し、慎重に接種する必要があるかどうかを検討されてください。

 

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